【読書】河合隼雄『青春の夢と遊び』岩波現代文庫

河合隼雄『青春の夢と遊び』岩波現代文庫 社会259 2014.4.16
https://www.iwanami.co.jp/book/b256508.html

 執筆当時、河合隼雄さんは、京都大学を定年退官する時期に、さしかかっていました。「いままで、あまり取り上げてこなかった、青春というものについて、あらためて考えてみよう」。その先に、河合さんは、大学の教授としてではなく、高校の先生のように、「一般市民へ自分の学んできたことを伝えていく」という、新たな役割を見い出しました。

 繰り返し、出てくる見方、「多層の現実」。ふだん私たちが生活している「単層の現実」とは別に、そのひとにとってだけ存在する、夢の世界、遊びの世界における現実がある。多層の現実を、いかに生きていくかで、そのひとの人生の味わいが、違ってくる。

 この見方、宮崎駿さんの『風立ちぬ』にも、通じる見方です。主人公の二郎は、飛行機の製作会社に勤める「単層の現実世界」と、カプローニと共に飛行機を飛ばす「夢の現実世界」に生きていました。

 さらに、連想。「この世界には、法がある」「この世界には、国家がある」「この世界には、愛情がある」。こうした事柄たちも、いってみれば、それぞれ「多層の現実」における一断面なのかもしれません。フィクション。しかし、たとえば「この世界には、法がある」ということにしておかないと、ひとびとが群れで生活していくことは、おそらく難しくなります。「単層の現実」と、「フィクションの現実」、両方について、バランスをとって生きていくことが、大事なのかもしれません。

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