池袋の司法書士・行政書士中島正敬┃中島司法書士事務所

【読書】上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』ちくま文庫

上野千鶴子『サヨナラ、学校化社会』ちくま文庫 う-17-3 2008.10.10
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480424600/

 著者・上野千鶴子さんは、社会学者。戦後のフェミニズム運動を牽引してきた一人。

1 内容抜粋

 学校化社会とは、学校の価値観(未来志向・ガンバリズム・偏差値一元主義)が、そのまま社会の価値観になっている、社会のこと。

(1)情報生産

 東京大学の学生たちは、読書レポートについて、内容の要約ばかり、出してくる。
 彼ら彼女らが、自分の意見を、読書レポートに書かない理由は、「突飛な意見を出すことによって、恥をかきたくないから」。
 そうした意味では、京都精華大学の、学生たちの書く読書レポートのほうが、自分たちの体面についてこだわっていない分、自分なりの意見が書いてあって、上野さんにとっては、面白かった。

 情報生産のためには、自分で一次情報にあたる必要がある。
 一次情報にあたる方法は、フィールドワーク。たとえば、インタビュー、アンケートなど。
 その一次情報について、各人が考えるなかから、各人の意見が、生まれてくる。
 書籍にまとまっている情報は、二次情報である。

(2)高学歴の女性の2タイプ

 学校化社会における、高学歴の女性がたどる足どりには、次の2タイプがある。

  A 自分自身が男性社会に参加してエリートになる。

   ⇒ 自分のためのお金は、自分で稼ぐ。

   例)東電OL事件

  B エリートの夫を持ち、エリートとしての自分の夢を、その夫と、子どもに託す。

   ⇒ 自分のためのお金を、男性にたかる。

   例)音羽の母

 男性社会において、Aを達成することは、至難の業。
 このように、社会のしくみとして、高学歴の女性が、Bを選びやすくなっている。

2 中島コメント

(1)情報生産

 上野さんの説く情報生産方法である「フィールドワーク」、個人的に興味があります。
 私自身、「自分の仕事での経験」という「一次情報」を、まとめる方法について、いま、苦心しています。
 上野さんには、より本格的な指南書として、『情報生産者になる』ちくま新書があります。
 この本も、いずれ、個人的に読んでみたいです。

(2)他力本願自称エリート

 上野さんによる、高学歴の女性についての、タイプの分け方に関しては、その後、バリエーションが、増えてきているのではないでしょうか。
 そのバリエーションの多様化は、「正社員」ではない、働き方の多様化にも、連動している印象が、個人的には、あります。
 「正社員」ではない、働き方のひとつに、たとえば、「自営業」があります。

 実際、上野さんの説くように、社会のしくみが、Bタイプの女性を生み出しやすくなっているとした場合、Bタイプの女性は、自分自身はエリートではないのですから、そのひとが、自分の子どもを、エリートとして育てることは、果たして可能なのでしょうか。
 母親から子どもに投げかける言葉が「あなたはエリートなの」だったとしても、母親の実際の行動は「他力本願」なのですから、その子どもは「他力本願自称エリート」とでもいうべき人間に、育ってゆくことになるのではないでしょうか。
 女性の働き方の選択肢が、少なかった(いまでも少ない)現代日本社会が、これまで、どのように子どもたちを育ててきて、その子どもたちが、いま、どのような大人になっているのかが、個人的に気になります。
 「他力本願自称エリート」は、言い換えると、「わがままおじさん」かもしれません。

 なお、上野さんの指摘である「社会のしくみとして、高学歴の女性が、Bを選びやすくなっている」ことについて、詳細に分析した、直近の書籍として、次のものがあります。中野円佳『育休世代のジレンマ』光文社新書。

 上野さんのお人柄を表しているかのような、明快な文章。読みやすく、面白かったです。

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