【考えの足あと】2022年・年始「戦後の準備をしなければならない」

 2022年・年始に、いま、私が考えていることを、ひととおり、書き留めておきます。

1 戦後の準備をしなければならない

 私の愛読書である、作家・堀田善衛さんの『天上大風』(ちくま学芸文庫)から、抜粋。
「戦後の準備をしなければならない」
 この言葉は、1943年、戦時中に、堀田さんが、作家としての先人である、河上徹太郎さんから、聞いた言葉であるそうです。
――それがどのような〝戦後〟であり、〝準備〟であったかは、一切わからないことに属するが、あの戦時中に〝戦後〟というものがありうるということに、氏の一言で私は眼を開かれた、と思う。

 私たちの生きる、この時代もまた、「戦後の準備をしなければならない」時代であるでしょう。そのことについて、詳しくは、「考えの足あと/これからの時代」という記事に、書きました。
――いったん、かつての「敗戦」のような、社会の変動が、やってくるかもしれない。
 換言しますと…
――いままで、こつこつ積み重ねてきた、自分たちの生活の基盤が、崩れるような、社会の変動が、やってくるかもしれない。
 そのような懸念がある時代であることから、毎年の、具体的な目標が、立てづらい状況が、続いています。

2 時流――新しい働き方

 そのような状況において、ひとびとのなかには、新しい動きが、表れはじめています。
 地方移住。在宅勤務。テレワーク。それらについての、まとめての呼称である、「新しい働き方」。
 この新しい働き方について、私の職場も、その動きに応じることができるように、しくみを変えてゆくべき時期が、来ています。

3 歴史――戦後史・現代史

 新しい働き方。新しい生き方。それらの、新しい動きについて、学んでゆくと同時に、私としては、「なぜ、このような状況になってきたのか」という、その経緯について、戦後史ひいては現代史を、丹念に学んでゆきたいです。
 これまでの経緯について、十分にふまえた上でこそ、本当に結実してゆく、「新しい」働き方、そして「新しい」生き方を、はじめることが、できるでしょう。
 このような考えについて、堀田さんが、『天上大風』のなかで、次のように述べています。――Back to the Future!

 個人的には、戦後史ひいては現代史における、日本の、敗戦直後の「預金封鎖」「新円への切り替え」や、1990年代の「バブル経済の崩壊」について、特に学んでおきたいです。また、敗戦以降、日本に生きてきたひとたちが、どのようにして、いわゆる「戦後民主主義」を、あるていど再建してきたのかについても、学んでおきたいです。

4 目標「私が仕事で見ている世界」完成

 ここまで書いてきた内容と、私の、2021年・年始のテキスト批評である『方丈記私記』(ちくま文庫)の内容とを、比べてみますと、正直な話、私の考えていることに、進展は、ほとんどありません。
 2021年の、一年間で、私にとって進展があったとすれば、それは、まだ完成はしていませんけれども、私が自分の仕事に関して、言葉にして、説明する文章である、「私が仕事で見ている世界」を、その5分の3ほど、書き上げてきたことです。
 この文章は、私が、私の仕事(ひいては組織)という樹木を育ててゆくための、幹にあたる文章です。この文章から、「相続登記」や「成年後見」などの、個々の業務についての説明が、枝葉のように、伸びてゆくことになります。
 その観点からは、「私が仕事で見ている世界」について、完成することは、私にとって、今年の、一番の目標とするべき、作業となります。

5 ひとが自ら育ちやすいようにする

 「私が仕事で見ている世界」は、完成したあと、私のホームページに、無料で公開しておくことにする予定です。
 ひとは、誰しも、自分のしている仕事について、その全貌が見えてこそ、目の前の仕事について、熟達することができるようになるからです。そして、その次の工程での仕事など、関連する仕事へも、着手することができるようになるからです。

 このことに関連して、私には、先の「新しい働き方」について、気になっている点があります。
――地方でできる仕事。
――在宅でできる仕事。
――テレワークでできる仕事。
 それらの仕事を用意することは、ひとつの仕事についての工程を、細分化して、そのなかから、上に述べた働き方でできる作業のみ、割り振ることにも、つながります。
 そのように、細分化した、一部の作業に、取り組み続けてゆくなかで、そのひとは、「自分の仕事の全貌が見えて」「その次の工程での仕事へも着手してゆくことのできるひと」つまりは「多能工」に、どのようにすれば、なってゆくことができるでしょう。

 仕事についての、全ての工程を通じての、「経験の獲得」「技能の習得」「知識の習得」。
 このことは、これから、若いひとたちが、個人として生きてゆく、そのための力を、自ら身に付けてゆくにあたって、大事なことでしょう。
 そして、新しい働き方について、準備して、実施しつつ、なおかつ、「若いひとたちが、自ら育ちやすい環境」を確保してゆくこと。そのことは、私が、これから、仕事を続けてゆくにあたって、若い仲間を増やしてゆくためにも、大事なことでしょう。

6 原点・私の仕事と職場――弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想

 以上、私の仕事と人生をめぐる、外界における変化、内面における深化について、書き留めてきました。

 そもそもの、私の仕事の原点となっている思いも、ここに、あらためて、書き留めておきます。
 その思いは、「少子高齢化社会に向き合う仕事がしたい」です。この思いは、変わっていません。
 私の職場が、相続登記や、成年後見について、主な業務としていることも、その思いが、もとになっています。また、私の職場が、「子育てできる職場」「介護ができる職場」を、目指していることについても、同様です。
 この私の思いにも通じる、上野千鶴子さんの言葉(『女の子はどう生きるか』岩波ジュニア新書)。
――フェミニズムとは、弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想である。
 この思想についても、個人的に、更に丹念に学んでゆきたいです。

7 個人的な楽しみ――王朝文学

 最後に、個人的な楽しみとしては、遠くない機会に、王朝文学を学びはじめてみたいです。
 私の好きな、作家・小川洋子さん、歌人・俵万智さんの著作について、読んでゆくうちに、私には、お二人が、『源氏物語』や『伊勢物語』などの「王朝文学」を、参照していることが、分かってきました。
 まるで、お二人が、私を、王朝文学の世界へ、手招きしているかのような、印象があります。お二人のお招きに、応じてみたいです。
 そして、王朝文学における、当時のひとびとの考え方と、現代文学における、現代のひとびとの考え方とを、照らし合わせてみると、その違いから、また新たな発見が、生まれるかもしれません。このことに関連する、上野千鶴子さんの言葉。「差異から情報が生まれる」。

 以上、私自身のための、書き留めでした。
 自分の問題意識について、確かめ直すような内容になりました。

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