【法学】相続法改正と実務 ジュリスト 2018年12月号(No.1526)特集

相続法改正と実務 ジュリスト 2018年12月号(No.1526)特集
http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/020130

 改正の動機は、非嫡出子相続分差別違憲決定。この決定に対して、一部の政治勢力から、「配偶者の相続分を引き上げるように」との要望が出て来た。改正の結果、配偶者の相続分の引き上げは、見送り。実務において問題となっていた諸点について、手当てがなされた。改正に関与した学者さんや実務家さんたちが、上手に議論を導いた様子。
 以下、個人的に気になった点を抜粋します。

① 「配偶者居住権」制度の導入

 遺贈や遺産分割協議など、遺言者、他の相続人らによる意思表示があってはじめて成立する権利。
 賃借権に類似した法定債権。
 存続期間は、原則、生存配偶者の終身。
 対抗要件は、登記。登記義務者は、その建物の所有権を取得した相続人。従って、相続登記と連件で登記することになる見込み。
 生存配偶者のための権利なので、譲渡できない。所有者に対する買取請求権もない。所有者から承諾を得て、賃貸することはできる。
 財産価値がある想定。所有権よりは価値が低くなる。その評価方法が問題になる。
 そして、「所有権の相続なら、その後、たとえば老人ホームへの入居資金を捻出するために、売却することができる。配偶者居住権の設定では、譲渡できないので、そうした資金捻出には使えない」。重要な指摘。

② 遺留分減殺請求権の金銭債権化 

 改正前の物権的効果は「家産を守るため」だった。
 それが改正後に債権的効果になったことによって「最低限の取り分を確保するため」の制度になった。
 また、計算の過程で不統一だった、財産評価の基準時も、「相続開始時」に統一となった。

③ 「相続させる遺言」の対抗要件

 改正前、「相続させる遺言」による不動産についての権利取得は、登記しなくても、第三者に対抗できた。
 改正後は、登記が対抗要件になった。同時に、遺言執行者には登記申請権限が付与。遺言執行者にとっては、第三者(他の相続人に対する差押え債権者等)が出現しないうちに、登記を申請する必要が生じることとなった。

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