【読書】伊藤雅子『子どもからの自立』岩波現代文庫

伊藤雅子『子どもからの自立』岩波現代文庫 社会37 2001.5.16
https://www.iwanami.co.jp/book/b256286.html?fbclid=IwAR1zOf6h8VjDShISNnQAztVxAiz6xbefHClECZZDqg34of3XP9WYygAPq4I

 著者の伊藤さんは、国立市の公民館の職員さん。

 幼児のいる、専業主婦のための市民講座。その実施には、保育室が必要だった。最初は、子育てを終えた先輩主婦たちが、幼児たちを保育していた。「こうした保育を、先輩たちの善意に依存することなく、継続してゆくことができるよう、その基盤を整えるべきではないか」。主婦たちから、市に対して、公民館に保育室を正式に設置するよう、働きかけ。

 そして、保育室は、正式に設置。運営には、保育者と、保護者とが、協同して、あたった。「保育室は、『子どもを預ける場』ではなく、『子どもが成長していく権利を保障する場』である」。であるから、保育には、保護者の参画も不可欠である。集団保育。

 「子どもが小さいうちは、母親が面倒を見るべき」。母性愛神話。しかし、母子関係には、「生命と生命との拮抗関係」も内在している。
 たとえば、動物の世界には「児やらい」という行動がある。成長した子どもに対して、母親が威嚇して、自立を促す行動。
 ※「児やらい」については、河合雅雄さんの『子どもと自然』にも、同様の指摘がありました※
 母親と子どもとが、家庭にしか居場所がなく、一心同体のように癒着している場合、母親も子どもも、生活してゆく能力を、失ってゆきがち。
 ※このことについては、柏木惠子さんの『おとなが育つ条件』にも、同様の指摘がありました※
 母親が子どもから自立するため、子どもが母親から自立するためには、自立した上で参加してゆくことのできる人間関係が、存在することが必要である。その人間関係を構築してゆく拠点として、集団保育という場が、重要な役割を果たす…

 行政と住民とが協同して、地域にとって必要な場所そして活動を、設置そして運営してゆく。住民運動のお手本として、参考になります。

 「保育室は、『子どもが成長していく権利を保障する場』である」。いい言葉です。企業内託児所の設置について、実行していくにあたっては、「その子どもが育っていくことに、いかに向き合うか」が、問題になることを、あらためて認識することができました。

 いい一冊でした(^^)

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