【読書】神谷美恵子『ケアへのまなざし』みすず書房
神谷美恵子『ケアへのまなざし』みすず書房 2013.8.23
https://www.msz.co.jp/book/detail/08367.html
(みすず書房「始まりの本」シリーズ)
神谷美恵子さんのエッセイ・論稿をまとめた一冊。神谷さん入門。最後の論稿2本は非常に難解。本当に入門?
「限界状況における人間の存在」。ある男性が、ハンセン病を発症。当時は隔離の時代。離島の長島愛生園に入ったら、もう出ることはできなかった。愛する妻との痛恨の別れ。そして、やがてくる身体機能の喪失への恐れ。限界状況に至ったとき、彼は「神の声」を聞いた。それからの彼は、朗らかに毎日の生活に励み、仲間たちの暮らしを支え、神社の境内を掃き清め続けた。治療は、「神が禁じている」と、ずっと拒否していた。
自分の死期を受容して、懸命に生きた姿。精神医学にとって、「神の声」を聞いた彼は、「幻覚・幻聴」という疾患を抱えた、「患者」だったかもしれない。しかし、神谷さんにとっては、彼は「敬意を持って接するべき、一人の人格」だった。
相手の身になって考えることの徹底。徹底しているがために、人間のいいところばかり見ていたり、社会問題として見る視点がなかったりと、一面的な見方になっているという問題点が、あるかもしれません。でも、相手にとっては、「神谷先生は、自分のこと、分かってくれた」と、救われた気持ちになったかも。病めるひとに、いかに寄り添うか。いいお手本になる一冊でした。