【映画】中川龍太郎『わたしは光をにぎっている』
中川龍太郎『わたしは光をにぎっている』
https://phantom-film.com/watashi_hikari/
「現代版・魔女の宅急便」。
ヒロイン、宮川澪。ハタチの女の子。ほとんど、喋らない。
いるいる、こういう、一見、ぼーっとしているけど、「見る目」と「聞く耳」のある、若いひと! 自分の世界を、ちゃんと持ってる…
この映画には、私の知り合いに似た若者が、3人分、出てきました。私にだけ、分かる話…
両親に代わり、澪を育ててきた祖母。その祖母が、入院することに。澪は、東京の親戚のもとへ。上京したくて、したわけではない。親戚のおじさんは、銭湯の主。千と千尋の神隠し?
職さがし。スーパーで、アルバイト。
「将来、正社員になれるみたい」
働いてみると、テスト前の高校生のシフトすら、融通できない、人手不足。ギスギスした職場。クレームばかりのお客様。澪は、1日で、アルバイトを辞めました。
おじさん。
(こんにゃろう、バイトでさえ、1日で辞めやがって…)
しかし、説教めいたことは、何も言わない。
落ち込む、澪。かかってきた電話。病床にある、おばあちゃんからの、アドバイス。「自分の、できることから…」。
澪は、自分の下宿している銭湯を、おもむろに、手伝いはじめます。おじさんも、何も言わずに、モップのかけ方から、教えてゆきます。
そうだっ、仕事の決まらない若者たちに、おじさんたちは、腕組みして、説教するよりも、自分の手足を動かして、自分の仕事の仕方を、丁寧に教えなさいっ笑
でも、ひとに働いて頂く立場になってみて、私にも、少し、分かってきました。私に説教してきたおじさんたちは、「そもそも、教え方が分からなかった」のでしょう…
澪は、おじさんが出かけていても、銭湯を、ひとりで切り盛りできるようになりました。
その出かけていた、おじさんが、ひどく、酔っぱらって、帰ってきます。
「この銭湯、まちの再開発でさ、もうじき終わるのさ。何年も前から、決まっていたんだがな…」
おじさん、澪の働く場所のために、銭湯を続けていたのかもしれません…
それまであった、地域での、ひととひととのつながりが、一気に無くなることに。「まちづくり」という名の「再開発」は、「まちこわし」でもあるようです。
銭湯が無くなってから、1年後。澪は、どのような道を、歩んだのでしょうか。それは、観てからの、お楽しみ。
監督の中川龍太郎さんは、撮影当時、29歳。平成に生まれた若者たちが、しっかりと自分の足で歩んでゆく、その様を、描いた映画でした。
映像も、美しかったです。洗い清めた銭湯の、静止した水面。山麓に広がる湖の、たゆたう水面…
素敵な映画でした。おすすめ。
追記 この映画の題名の原詩も、素敵なので、引用しておきます(山村暮鳥「自分は光をにぎつてゐる」)。