【読書】座談会/鈴木敏夫ほか「映画館で見るという行為がいつも中心にあって、そここそが映画の魅力なんだと思います」スタジオジブリ『熱風』2020年6月号
座談会/鈴木敏夫ほか「映画館で見るという行為がいつも中心にあって、そここそが映画の魅力なんだと思います」
スタジオジブリ『熱風』2020年6月号
http://www.ghibli.jp/shuppan/np/013276/
スタジオジブリ「熱風」。毎月10日、ジュンク堂・池袋本店など、全国の主要書店で配布。郵便振替での定期購読もできます。
プロデューサー・鈴木敏夫さんをはじめ、東宝、博報堂など、日本映画業界のトップランナーたちによる、座談会。
以下、個人的に気になった部分を、抜粋します。
1 抜粋
(1)映画館
映画館が、長期にわたり、休業。配信で封切りする映画も出てきた。映画館が営業を再開したとして、観客は、戻ってくるのか?
太平洋戦争後も、テレビ放映後も、ネット配信後も、映画館は、生き残ってきた。
鈴木さんの指摘、「ひとが集まることの愉しみ」。
映画館で、映画を観ること。このことは、残っていくのでは。
(2)生産と消費
現代資本主義社会は、大衆による大量消費社会だった。その大衆大量消費が、できなくなった。このことが、今後、この社会に、どのような変化を、もたらすのか?
鈴木さん、「もともと、ひとびとは、『生産者』だった。それが、時代とともに、『消費者』になっていった。今回のことがきっかけになって、『消費』から『生産』へと、ひとびとの関心が、再び向いてゆくのでは」。
2 中島コメント
(1)映画館
映画館で映画を観ることは、たとえば、私にとっては、「異界への隔離」。真っ暗な、空間。来客もない、巻戻しも早送りもできない、時間。そこで、ゆったりと映画のなかの世界に、没入してゆく、愉しみ。この愉しみは、自宅で再現しようとしても、なかなかできないかも。たとえば、映画館で観た『コクリコ坂から』の、ラストシーンは、素晴らしかった…
ここまで書いてきて、個人的に、気がついたこと。映画館の愉しみは、図書館での愉しみと、似通っています。図書館も、ゆったりと、書籍のなかの世界に没入してゆくことのできる空間であり、時間です。
ここのところ、コロナの騒ぎで、映画館も、図書館も、閉じている状況のなか、私の脳裏に浮かんできた思いは、「自宅を、映画館や図書館のような空間に、改良できないかなぁ?」。
映画館に、観客が戻ってくるかどうかについては、「この騒ぎを経て、ひとびとが、自分の住まいを、いかに過ごしやすく改良してゆくか」ということが、ひとつの要因になるのかもしれません。
ただ、自宅には、「ひとが集まることの愉しみ」は、ありません。もし、自宅を改良しても、映画や書籍を、愉しむことができなかった場合には、鈴木さんの言っていることが、正しいことになるのかも。実験してみたい…
(2)生産と消費
鈴木さんの指摘のとおり、そもそも、原初の資本主義の精神には、「消費の美徳」は、なかったはず。
質素と倹約で、富を天に積んで、その富が、設備投資に転化する。その循環が、資本主義社会の発展の、その原点だったはずです。
「消費の美徳」は、いつ、生まれたのでしょう?
「生産者」から「消費者」への、ひとびとの転換は、いつ、生じたのでしょう?
いわば…
「生産者」は、「何でもしてあげるひと」。
「消費者」は、「何でもしてもらうひと」。
前者から後者への転身は、簡単でしょう。「何もしなくなる」だけですので…
後者から前者への転身は、一朝一夕には、ゆかず、「消費できなくなる」以上のきっかけが、必要になりそうな気が、個人的には、します。
示唆のある、よき特集でした。