【読書】濱口桂一郎『働く女子の運命』

濱口桂一郎『働く女子の運命』文春新書 1062 2015.12.18
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610624

「運命」というよりも「日本史」。

〔働く女子の日本史〕

① 江戸末期から明治にかけて、日本でも工場が設立。当初は良家の子女が働きに出た。しかしどんどん低賃金・長時間の労働に。女工哀史。
② 太平洋戦争までには、BG(ビジネスガール)として会社勤務する女性も出るも、結婚による退職を前提とした若年退職制度。
③ 戦時中、国は、生活保障型賃金制度を設計実施。男性に対して、その家族分まで含めた給与を支給する。社員に転職の自由なし。企業に解雇の自由なし。
④ 戦時中の制度をもとに、現在まで続く「正社員」制度が形成。その家族まで含めた生活保障型の年功序列賃金での終身雇用。女子の結婚退職制度は維持。考え方「女子にも同じように給与を支給したら、1世帯に2世帯分の給与がゆくことになる」。
⑤ 婦人差別撤廃条約批准から成立した男女雇用機会均等法(1985年)により、女子結婚退職制度が維持困難に。その代わりに「総合職」「一般職」のコース別での採用に。OLの誕生。一般職は、やはり結婚を機に退職する想定のコース。
⑥ 1997年、均等法が改正。企業は、もはや「総合職」「一般職」のコース別での採用もできなくなった。その結果、「一般職」は「非正規雇用」(契約社員・派遣社員)に。「正規雇用」(総合職)に就いた女性は、「場所・時間・職務」に限定のつかない正社員として、同じ立場の男性たちと同じように働くことに。しかし、管理職における女性の割合は、2013年でも7.5%。明らかに昇進できるポストが少ない。そして現在へ。

〔働く女子の現在〕

根本的な問題は、日本における正規雇用の無限定性。「場所」「時間」「職務」すべてを、会社が指定することができる。
しかし欧米では通常、正規雇用でも、これら3点を限定して契約を締結する。欧米式の雇用契約は、日本では「ジョブ型正社員」「限定正社員」という。
著者の意見としては、欧米が特殊なのではなく、日本が特殊。日本の雇用契約が無限定すぎる。やっと、2014年7月に、昇進の要件として「転勤経験」が入るのが、男女の間接差別として禁止になった程度(施行規則2条3号)。

特に「労働時間」の無限定性については、問題として取り上げられてすらいない(本書出版当時)。
正規雇用の男性が、長時間労働のため、家事・育児・介護に従事できないことが問題になっているのに、女性についても、「正規雇用がいいなら、同じように長時間労働せよ」。更に女性には、家庭においても、家事・育児・介護の負担が偏りがち。男性以上に頑張る必要が。その結果、女性は、正社員として男性と同じように昇進してキャリアを積んでいくことについて、どこかの時期に妥協する。そうなりがちな仕組みになっている。
妥協した女性が、その後、社内で進んでゆくコースを「マミートラック」という。そのポストも限られている。しかし、「マミートラック」は、実は、欧米での通常の雇用形態である「ジョブ型正社員」に似ている。むしろ日本でも将来は「ジョブ型正社員」を男女ともに通常の雇用形態としてゆくべき。
ただし移行期間は必要。いまの学生たちは、何らかの職業教育を特には受けないまま、就職活動をはじめる。そこに「ジョブ型で勤務するように」との求人をぶつけたら、深刻なミスマッチが起こる。

〔中島コメント〕

日本的雇用である「無限定正社員」という働き方に問題がある。その意見が明快に書いてあって、とても参考になりました。

「総合職」「一般職」による男女のキャリア差別については、年功賃金・終身雇用を支持していた高橋伸夫さんの本(『虚妄の成果主義』『できる社員は「やり過ごす」』)には、ぜんぜん出てこなかったなぁ。

欧米式「ジョブ型正社員」制度、もっと調べてみます。私の事務所における雇用制度について、いいモデルが見つかりましたo(^-^)o
「長時間労働にならないように」「家事・育児・介護にも対応しつつ」「自分で生計を立ててゆくための技術を習得して、経験を積んでゆく」。女性も男性も、こういう働き方ができたらいいな…